溢れる明かりのあたたかさは、オーナーのパンづくりへの情熱と人への愛情

  • 所在地 北海道釧路市芦野
  • 着手期間 2020年9月〜2022年12月(コロナや資金調達の方法変更により途中中断期間あり)
  • クライアント 個人

課題・要望

長年パンづくりの活動をしてきたクライアントからの、自宅1階を改装してお店を開きたいというご相談。コンセプトワークからブランディング、お店のネーミング検討、ロゴのディレクション、店舗内外装のデザインディレクションを行いました。

before

提案

北海道釧路市芦野にある、小さなパン屋さんのプロデュース事例です。クライアントは以前から、パンづくりやお菓子づくりの教室を催すなどの活動をしていました。私の地元でもある釧路市のまちづくり活動を通じて知り合って以降、まちづくり活動の仲間として、そして友人としての付き合いがありました。

お店づくりが具体的になる前から、弊社が手がけた『CHILL』や『hatome』を見学するために北海道から関東へ足を運んでくれ、そのコンセプトや場づくりに共感してくれていたクライアント。「自分のお店をつくるときは、ぜひお願いしたいと思っていた」と、プロデュースを依頼してくれました。

フランチャイズの高級食パンや、奇抜なネーミングのパン屋が増えている近年。クライアントの作るパンは自家製発酵種を使ったハードパンで、その純粋無垢さと実直さを伝えられるコンセプトをつくるところから、一緒に取り組んでいきました。ずっしり食べ応えのあるパンをぜひディナーでも楽しんでほしいと思い、「噛んで食べるスープ」と併せて提供することにしました。パンには北海道産の小麦を、スープには地元の食材をたっぷり。そんなスローフードを提供するお店です。また、「美味しいもの」への探究心が強いクライアントが、全国各地で出会った商品の販売も行っています。

 

お店となる場所は、クライアントの自宅1階。子どもたちが独立し、使われなくなっていた個室部分を改装しました。自宅をお店に改装するにあたり、保健所や消防にも確認をとりながら、地元の設計士と工務店と連携して、お店づくりを進めました。

「ディナーで楽しむパンとスープ」というコンセプトから、お店の営業時間は15時~19時に設定。夕暮れ時以降の来店が多くなることが予想されました。そこで、お店の外壁にはあえて黒っぽいものを使い、宵闇の中に溶け込むようにして、ガラスドア越しに中で働くクライアントの様子が漏れ伝わるようなファサードにしました。

何度も大病に見舞われながら、それでもパワフルに前向きに、「食」への挑戦を続けてきたクライアント。その情熱の強さと太陽のような明るい人柄は、多くの人に慕われていました。そんな彼女の人柄だけが際立つファサードにしたいと考えたのです。宵闇に浮かぶ明かりのあたたかさ。それは彼女の人やまちへの愛情と、パンづくりへの情熱のあたたかさです。

店名は、クライアントが以前から使っていた「Jimipan」という屋号を残しながら「co」を加えて「Jimico.」としました。「co」には“仲間”という意味もあり、多くの友人や仲間たちの支えがあって今があるクライアントの人生を表現しました。

「自分の人生の集大成となるパン屋を開きたい」と言っていたクライアント。彼女の人柄とパンづくりへの情熱をオマージュした、オンリーワンなお店づくりです。

 

 

 

 

担当:和泉直人

設計:Hiroki Kato Architecture

施工:BASE 9 (十枝内 一徳)

店舗運営     :jimico.(菖蒲田望美・奈良美千代)

総合サポート:jimico.(赤間俊彦)

ブーランジェ:jimico.(赤間有美子)

厨房施工    :株式会社エコリューション釧路(須藤圭麻)

ロゴ制作  :佐藤翔吾

写真:大澤将基

AFTER