「我が家」を「地域のみんなの場所」に。店舗併用住宅で始める小商い

  • 所在地 東京都大田区下丸子
  • クライアント 個人

課題・要望

お祖父様がお住まいだった家を引き継ぐことになった30代のクライアント。家族3人で暮らすには十分な広さの家だったこともあり、一部をテナント貸しすることを検討していました。

before

提案

広い戸建てを得ることになったクライアントは、家族3人で暮らすご自宅として使いながら、一部をテナント貸ししたいと考えていました。クライアントは参考としていくつかの複合施設を見学しており、地域貢献をテーマに弊社でプロデュースした「CHILL」の事業に共感していただき、「ただのテナント貸しではなく、CHILLのような場所にしたい」と、プロデュースをご依頼いただきました。

 

クライアントが引き継いだ家は、築50年を超える木造2階建てで、延床面積が約170㎡、敷地は約230㎡で広い庭がありました。かつてはお祖父様が暮らしていた家であり、近くにはクライアントのお父様が指導者として運営しているスポーツ施設もあるという、地域に根ざした場づくりにぴったりな背景もありました。

 

『hatome』がある東急多摩川線・下丸子駅は、平均乗降人数が27,000人程度のこじんまりとした住宅街です。駅前にはマクドナルドや大手ファミレス、コーヒーチェーン店がそれぞれ1店舗ずつあり、どの店も長蛇の列をつくっていながら競合他社は入り込んで来ず、他の多くのお店は個人が営業しているような、ローカル色の強い街でした。クライアントの物件は前面道路の人流が少ないやや奥まったロケーションにあったため、隠れ家的飲食店を主軸にしたコンテンツを検討していきました。

 

『hatome』はカフェ、コワーキングプレイス、アートギャラリー、作家による作品販売スペースで構成されています。戸建て住宅の一部という規模感は、withコロナ時代の今、少人数での気軽なパーティー需要も見込めると考え、各スペースごとに区切るのではなく、それぞれの要素が混在した空間にしました。

 

カフェの部分は、ここも『CHILL』同様、常設カフェに加えてシェアキッチンを導入しています。常設のカフェでドリンクを提供しつつ、シェアキッチンでは曜日ごとに異なるシェフによるメニューを提供することで、近隣住人でもあるお客様に常に新鮮な楽しみを提供し、かつテナント退去時のリスクを軽減することも叶えました。

 

アートギャラリーはカフェの飲食スペースを兼ねる形にしました。店内にはアーティストの作品が展示販売されており、訪れる近隣住人に非日常的な体験を提供。店内のカウンターにも作品販売スペースを設け、ハンドメイドアクセサリーやクラフト作家の作品を販売しています。店舗はイベントスペースとしても使われており、ご近所の人がフラワーアレンジメントの教室をやったり、地域のアートイベントが催されたり、スポーツ団の懇親会や同窓会の会場として使われるなど、“地域のみんなの場所”になっているようです。

 

店の内装・設備機器はオーナーであるクライアントが費用を負担しており、この立て付けには、テナント側がイニシャルコストをかけずに開店できるメリットがあります。現在『hatome』の運営は弊社が請け負っており、売上を建物オーナーであるクライアントと分配する、レベニューシェアと呼ばれる成功報酬型の契約形態をとりました。店の売上が上がるほどオーナーに還元されるしくみなので、オーナーも運営にコミットすることができます。クライアントは同じ建物に住まいを構えていることもあり、運営に関与がしづらいただのテナント貸しよりもメリットの多い方法でした。

 

内装は天井の木の梁を見せたり、既存の障子を利用するなど、「元々は住宅」であることを活かした空間にしました。そうやって商業の要素と住宅の要素の境界を曖昧にして、クライアントのお子さんが庭で気軽に遊べるような雰囲気をつくりつつも、パーソナルな印象にはなりすぎないよう、1階店舗のファサードや外構を整えていきました。また、1階が飲食店、2階がオーナー住戸という構成で、古い戸建てのリノベーションでもあったため、公衆衛生への対応も入念に行っています。

 

自宅を住まいとして使うだけでなく、小商で収入を得られる建物にする。個人の資産形成方法として今後着目したいスタイルであり、地域の方々が気軽に立ち寄れる場所にすることは地域貢献だけでなく、長期的な事業継続にもつながります。プロのサポートは必要だと思いますが、個人レベルだからこそできた、みんなが幸せになれる場づくりだと思います。

 

 

 

 

担当:和泉直人・小室実穂

設計:tombow architects

施工:山内工務店

カフェ経営・全体運営:bonvoyage株式会社

家具製作:藤原設計大工

資金計画協力:創造系不動産

ロゴ制作:渡辺祐亮

写真:中村晃 / 菅野葉菜

AFTER