元パチンコ屋の“遊技場”感を活かしたアートとスポーツの融合施設

  • 所在地 川崎市川崎区駅前本町
  • 着手期間 2021年7月〜2022年8月
  • クライアント 企業

課題・要望

クライアントは株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース。元パチンコ屋を改修してアーバンスポーツの総合施設にする事業のプロデュースの依頼で、事業計画の段階から参加しました。建物は再開発のために近い将来に解体される予定がありました。

before

提案

B.LEAGUEに所属するプロバスケットチーム「川崎ブレイブサンダース」を運営する、株式会社DeNA川崎ブレイブサンダースによる事業。3人制のバスケ「3×3」やスケボーが体験できるコート、ブレイキンやダブルダッチなどができるダンスエリア、eスポーツ体験スペースに加え、川崎市に拠点を置く世界的ブレイキンチームやダブルダッチチーム、プロeスポーツによるスクールや体験イベントも展開する、アーバンスポーツのメッカをつくるプロジェクトでした。

 

『カワサキ文化会館』は、川崎市が公募した若者文化発信によるまちづくり事業として採択された事業。その事業地となったこの建物は、川崎市が京浜急行電鉄株式会社から使用貸借しているものでした。建物は直前までパチンコ屋として稼働しており、外観も内部もそのまま。さらに建物は再開発のため近い将来に解体される予定で、投資できる予算はかなり限られた状況でした。しかし、今注目されているアーバンスポーツのさらなる盛り上がりを後押しする場所であり、世界で活躍するプレイヤーたちが集まる施設でもあることから、内容には妥協できないという、なかなかの難題でした。

 

そこで、ローコストを逆手にとった発想に転換。“遊技場らしさ”満載の元パチンコ屋の装飾を、“モニュメント”としてあえて残すことにしました。そして新たに加える要素は最低限にして、この場所の歴史や文化のストーリーそのものも楽しみながら、アーバンスポーツに興じることができる場所として、施設コンセプトと改修計画をつくっていきました。

「歴史と文化のストーリー」の見せ方は、残すところと壊すところ、このふたつの線引きの具合によってが決まってくるので、設計者とともに現場に立ち合い、解体業者と何度も打ち合わせを重ねました。パチンコ屋時代の装飾が賑やかな照明器具を再利用したり、解体の途中で出てきたダイナミックな換気ダクトをライトアップしてオブジェとして見せるなど、かつてのパチンコ屋の名残をアート的な要素に昇華させて、空間の彩りとしています。

 

重機で一気に解体することができないので、現場には負担をかけてしまう方法でしたが、廃棄物の処理コストも上がってきている中、解体にかかる総コストの削減や環境負荷の低減にもつながりました。

 

スポーツにとどまらない若者文化の発信拠点とすることをコンセプトに掲げたこの施設では、「アートとスポーツの融合」もひとつのテーマにしており、施設の外壁や内装に国内外で活躍するアーティストのイラストレーションを取り入れ、コンセプトの表現と内外装の印象刷新を両立しました。

 

また、「新たに加える要素」については最低限にするほかに、数年後の解体時に“廃材”とならない、「再利用できる素材」を使って空間をつくっていきました。1階にある施設利用者向けのカフェテリアでは、工事現場の足場などに使われる単管パイプで店舗ファサードを構成。2階にある従業員専用のラウンジでは、輸送用パレットを組み合わせてカウンターを作り、将来、建物が解体される時の廃棄物の削減と環境負荷の軽減を図っています。

 

カフェテリアやラウンジ以外にもいくつかのテナントが入る予定だったので、それぞれのテナントに必要な面積や設備を取りまとめながら、既存利用する箇所との兼ね合いをつけていきました。今回は建物の用途変更をせず「遊技場」の用途のままの改修だったこともあり、設計者と連携して関係するさまざまな法規をクリアしながら、全体の整合性を調整していきました。

 

施設のコンセプトと建築の融合、投資コストと工事内容のバランス、将来の解体も見越したエコロジカルなデザイン。難しいプロジェクトでしたが、地域のスポーツや若者文化を盛り上げながら、変わりゆく街の歴史と文化のストーリーも伝えていく、面白い場づくりができたと思います。

 

 

 

 

 

 

 

担当:和泉直人・佐藤舞子

設計:株式会社MADARA

施工:ニチビル

外装イラストレーション担当:vug(バグ)

館内作品展示アーティスト:GAKU(ガク)

館内アートワーク:WHW!

ロゴ制作:BOY

写真:中村晃

AFTER