かつてサウナとして営業していた駅徒歩3分の建物を相続したクライアント。当初は解体してコンビニへ土地を貸し出す予定でした。事業性としては申し分ない計画でしたが、一方で建物の構造は堅牢で、解体コストや環境負荷の大きさも無視できない。
そしてなにより、すでに飽和している地域のコンビニ需要の中で、「このまちにとって本当に必要なものは何か?」という問いが立ち上がりました。
廃業したサウナが、まちの風景にどんな再起動をかけられるか——。そんな視点から、このプロジェクト『CHILL』は始まりました。
食とアートと音と映像と。
子育て層が、自分の時間を諦めない
ための施設をつくる挑戦
子育て層が、自分の時間を諦めない
ための施設をつくる挑戦

REQUEST
- 廃業した元サウナ施設を相続したが、どうしたら良いだろうか?
- 色々考えたい気持ちもあるが、普通にコンビニにしようかな
- そもそもこの建物、まだ持つの?
所在地 | 神奈川県川崎市 |
クライアント | 法人(地元企業) |
“解体”か、“再生”か。
地域に潜る、声を集める。
プロジェクトの第一歩は、建物のポテンシャルを見極める耐震診断と、地域に根ざすための対話の場づくりから始まりました。近隣の元ガソリンスタンド跡地を活用して水遊びイベント(After写真6枚目)を開催し、100件を超えるアンケートを収集。文化施設の不足感や子育て世代の存在など、潜在的に存在していたまちの「リアルな声」が少しずつ炙り出されてきました。その声をもとに、20〜40代の生活者を核とした“暮らしに寄り添う文化的拠点”をコンセプトに設計を進めていきました。
テーマは"食とアートと音と映像と"
3階には常設カフェとイタリアンレストラン、そして日替わりシェフによるシェアキッチンが並ぶ4区画のフードホールを設置。飲食業未経験者や子育て後の復帰希望者が気軽にチャレンジできる仕組みとし、まちの中に眠る隠れた人財を掘り起こす起点にもなりました。2階は川崎に縁あるアーティストのアトリエ。来場者はこのアトリエを通って飲食フロアにアクセスする動線設計とし、作品展示や販売の機会を創出。アーティストの活動支援とまちの文化体験が自然に重なり合う空間となっています。文化と商業が切り離されず循環する、新しい複合施設のあり方を形にしました。
"壊す"のではなく、"活かす"という選択
施設運営はbonvoyageが担い、建物オーナーとはレベニューシェア型の契約を採用。テナント退去のリスクを抑えつつ、継続的な収益構造と地域価値を両立させました。
『CHILL』という名前の通り、立ち寄った人がほっとひと息つけることはもちろん、思いがけず何かを始めたくなるような、静かな起点になっていく。
地域課題を新しい価値構造へと翻訳し、「まちにおける不動産の新たな役割」を示したプロジェクトとなりました。
—
2021年グッドデザイン賞を受賞(外部リンク)
https://www.g-mark.org/award/describe/52927
『CHILL』という名前の通り、立ち寄った人がほっとひと息つけることはもちろん、思いがけず何かを始めたくなるような、静かな起点になっていく。
地域課題を新しい価値構造へと翻訳し、「まちにおける不動産の新たな役割」を示したプロジェクトとなりました。
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2021年グッドデザイン賞を受賞(外部リンク)
https://www.g-mark.org/award/describe/52927
担当 | :和泉直人 |