Works手がけたプロジェクトたち

駅前の新たなランドマークビル。
小商いの集合体が織りなす”新しい普通”のカタチ
場を育てる運営
建築プロデュース
商業施設
新築
REQUEST
  • このまちで暮らす人々の、日々の暮らしを豊かにする、ということがすごく大切
  • テンプレートの焼き増しではなく、収益性と多様性が共存する姿をきちんとつくりたい
所在地神奈川県川崎市
クライアント法人(地主)
まちの文脈は、連綿と繋がってゆく
このビルの企画は、実は何年も前から始まっていたのかもしれません。というのも、本プロジェクトのクライアントは、過去私たちが運営を行ってきた「おふろ荘」「CHILL」のオーナーでもあり、私たちが生み出す価値や豊かさの濃度など、そして論語と算盤の両立具合などをずっと感じて、納得して、実際に一緒に歩んできた人だから。おふろ荘で構築した「アートが日常に豊かさの姿」を、元サウナ施設をリノベーションしてできた「CHILL」にて最大化。「食とアートと音と映像と」というコンセプトで年間3万人を超える方々に来場していただく施設にまで成長したので、次はそれぞれのコンテンツを建物内だけで完結するのではなく、どんどんまちなかに展開していこう。という考え方から始まりました。
金太郎飴 vs キャラクタライズ
このプロジェクトの舞台である武蔵新城駅駅前もそうですが、日本の多くの駅前の風景は、大資本のチェーン店が居並び、金太郎飴のようにどこも特徴を失ってしまっています。利便性・安定性が高い一方で、日々を楽しめる余白や発見はそこまで多くありません。もっと、小さな個性が集まり、まちの人々が行き交い、新たな発見が生まれる場所が駅前に必要だと考え、「小商の集合体」を構想しました。賃料坪単価が高い駅前なので、面積を最小化し、小規模な区画をたくさん設けることで、小資本企業・個人事業主・スモールビジネスが駅前にも出店できる仕組みを創りました。
収益性と安定性と多様性の全項目を叶える
建物は5階建ての商業施設。小商の集合体というコンセプトはすぐに決まりましたが、すべてのフロアを小商にするには「安定性が課題」でした。そこで、5層のうち小商に特化させるフロアを絞り込み、他の1階、4階、5階には、収益性と利便性を中心に展開することにしました。その安定基盤を持ちながら、2階と3階には「nomaのだいどころ」「nomaの小商い」といった新たなチャレンジを盛り込んだフロアを配置。個性あるテナントが集い、まちに開かれたにぎわいを生み出しています。日常に根ざした機能と実験的な取り組みが共存する、複層的な構成としました。
2階:nomaのだいどころ
2階の「nomaのだいどころ」は、「大人のファミレス」がコンセプトのフードホール。個別の厨房を持つ5つの飲食店が集まり、共用の“シェアできる客席”も設けています。来訪者は複数の店の料理を自由に組み合わせて楽しむことができ、テナントにとっては飲食店同士の送客にもつながっています。お気に入りのお店を目当てに来た人が、思いがけず新しい味と出会う。そんな「小さな発見」を重ねながら、駅前にワクワクとにぎわいを生み出す場を目指しました。
3階:nomaの小商い
3階の「nomaの小商い」は飲食以外の小商いゾーン。サービス業やオフィス利用を中心とした10区画で構成され、小規模事業者が出店しやすい設計となっています。仕切りには有孔ボードを採用し、お金をかけずに陳列が容易にできるように工夫を設けています。駅前の一等地でも、小さな事業が息づく場所を。多様な「小商い」が集まることで、まちの日常が豊かになるような風景を描いています。
“々”に込めた願い
施設名「noma」は、“人々”“日々”といった言葉に使われる「々(ノマ)」に由来します。この建物が、特別な場所ではなく、日常の中に自然と溶け込みながら、少しだけ人々の日々を豊かにするような存在になることを願って名づけました。まちに暮らすみなさんの選択肢が広がり、ちょっとした発見や出会いが積み重なる場所。さまざまな人が行き交う駅前だからこそ、日々の暮らしを“少しだけでも豊かにする”を提案できる場をつくったプロジェクトです。
担当:佐藤舞子, 和泉直人