廃墟から文化を生み出す、地域再生プロジェクトー大谷グランド・センターー
REQUEST
- 採石産業の衰退とともに観光客が減少した大谷町を、地元企業として再び活気ある場所にしたい
- 「観光地」として外部の人だけが消費する場ではなく、地元の日常と訪れる人がシームレスに交わる場をつくりたい
- 1500年の歴史・文化・自然を持つ大谷町の本質的な魅力を、流行に左右されない形で体験できる施設として再生させたい
| 所在地 | 栃木県宇都宮市大谷 |
| クライアント | 法人(地元企業) |
4haを、構想から運営まで
約4ha。閉業から30年以上、岩山に抱きつくように建ったまま残されていた複合施設。bonvoyageは、土地全体の再生構想から、法規整理と行政協議、ブランド設計、クリエイターのアサイン、運営計画までを一貫して担いました。目指したのは、観光地をつくることではありません。1500年続いてきたこの土地の時間を、途切れさせずに次へ渡すことでした。
大谷という場所
栃木県宇都宮市大谷町は、約1500年にわたって採石が続く「大谷石」の産地です。フランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテル旧本館にも用いられたことで世界的に知られ、切り出された岩山そのものが景観となり、独自の文化を育んできました。
採石産業が隆盛を極めた時代には県内有数の観光地として賑わいましたが、産業の衰退とともに人の流れも減少しました。一方で、現在もこの土地には変わらず人々の暮らしがあります。
私たちが向き合ったのは、「観光地をつくること」ではなく、この土地が本来持つ時間や営みを、未来へどうつないでいくかという問いでした。
採石産業が隆盛を極めた時代には県内有数の観光地として賑わいましたが、産業の衰退とともに人の流れも減少しました。一方で、現在もこの土地には変わらず人々の暮らしがあります。
私たちが向き合ったのは、「観光地をつくること」ではなく、この土地が本来持つ時間や営みを、未来へどうつないでいくかという問いでした。
プロジェクトの出発点
本プロジェクトは、宇都宮市で印刷業を営む地元企業の「かつての大谷の賑わいをもう一度取り戻したい」という想いから始まりました。
ただし、目指したのは過去の再現ではありません。1500年にわたり積み重ねられてきた歴史や自然、文化、そして今も続く地域の日常を見つめ直し、地域の人と県外・海外から訪れる人が同じ場所で自然に過ごせる状態をつくること。
地域資源を守りながら、新たな価値を生み出す。その両立が、このプロジェクトのテーマでした。
ただし、目指したのは過去の再現ではありません。1500年にわたり積み重ねられてきた歴史や自然、文化、そして今も続く地域の日常を見つめ直し、地域の人と県外・海外から訪れる人が同じ場所で自然に過ごせる状態をつくること。
地域資源を守りながら、新たな価値を生み出す。その両立が、このプロジェクトのテーマでした。
エリア全体の再生計画
対象となったのは約4haの土地です。その中には営業を終えた旅館や浴場を備えた複合施設が、閉業当時のまま残されていました。
再生の可否は、意匠の前に法規が大きく影響します。まず着手したのは、都市計画法・建築基準法・消防法などの法規整理と行政協議でした。市と県を跨いで様々な状況整理と可能性を探るのに、約半年を要しました。ここを丁寧に、深く確定させないかぎり、構想はどれだけ美しくても図面のままで終わります。
事業として実現可能な条件を整理しながら、土地全体のマスタープランを策定しました。
そして掲げたコンセプトは、「大谷町の歴史・文化・自然・風土と深く共存し、その価値をタイムレスに再解釈すること」。
そのうえで、4haのどこから動かすかを判断しています。事業性、地域への波及、将来の拡張余地を比較し、大谷町の入口に建つ「旧山本園グランド・センター」の改修を、第一期と位置づけました。全体に一度に手をつけないことが、この土地では最も確かな進め方であると考えました。
再生の可否は、意匠の前に法規が大きく影響します。まず着手したのは、都市計画法・建築基準法・消防法などの法規整理と行政協議でした。市と県を跨いで様々な状況整理と可能性を探るのに、約半年を要しました。ここを丁寧に、深く確定させないかぎり、構想はどれだけ美しくても図面のままで終わります。
事業として実現可能な条件を整理しながら、土地全体のマスタープランを策定しました。
そして掲げたコンセプトは、「大谷町の歴史・文化・自然・風土と深く共存し、その価値をタイムレスに再解釈すること」。
そのうえで、4haのどこから動かすかを判断しています。事業性、地域への波及、将来の拡張余地を比較し、大谷町の入口に建つ「旧山本園グランド・センター」の改修を、第一期と位置づけました。全体に一度に手をつけないことが、この土地では最も確かな進め方であると考えました。
bonvoyageの担当領域
企画構想/事業計画/法規整理・行政協議/マスタープラン策定/ブランド設計/コンテンツ企画/クリエイター・設計者のアサイン/各種クリエイティブディレクション/施工者コンペの取り仕切り/運営計画の立案/飲食部分監修者の決定と調整/飲食部分の方向性立案/各種スタッフの面接
この規模のプロジェクトでは、これらは通常、別々の担い手に分かれます。法規はコンサルタントが、意匠は設計事務所が、ブランドは制作会社が、運営は運営会社が引き受ける。それぞれが自らの領域で最善を尽くします。それでも全体が最善にならないことがあるのは、領域と領域の境目に、判断が落ちるからです。
実際には、すべてがつながっています。行政協議で確定した条件は、そのまま展示空間の天井高や動線の与件になります。運営計画で置いた人員の想定は、厨房の仕様を通じてメニューの構成にまで及びます。ブランド設計で選んだ一つの言葉は、サインの書体にも、器の選定にも、スタッフが最初にかける挨拶にも降りていきます。施工者コンペの与件書をどう書くかで、「残したい岩肌」が本当に残せるかどうかが決まります。
bonvoyageが担ったのは、これらを横断して同時に持ち続け、条件が動くたびに相互の関係を調整し直すことでした。一つが変われば、影響は必ずどこか別の領域に出ます。その連鎖を最後まで引き受ける担い手、つまり全体統括プロデューサーがいなければ、プロジェクトは優れた部分の寄せ集めで終わります。
私たちが目指したのは、部分ごとの完成度ではありません。訪れた人が、この施設を一つのものとして受け取れる状態です。空間と、料理と、作品と、迎える人の言葉が、それぞれ別の出自を持ちながら、同じ一つのことを語っている。「その状態の完成度の高さ」です。
この規模のプロジェクトでは、これらは通常、別々の担い手に分かれます。法規はコンサルタントが、意匠は設計事務所が、ブランドは制作会社が、運営は運営会社が引き受ける。それぞれが自らの領域で最善を尽くします。それでも全体が最善にならないことがあるのは、領域と領域の境目に、判断が落ちるからです。
実際には、すべてがつながっています。行政協議で確定した条件は、そのまま展示空間の天井高や動線の与件になります。運営計画で置いた人員の想定は、厨房の仕様を通じてメニューの構成にまで及びます。ブランド設計で選んだ一つの言葉は、サインの書体にも、器の選定にも、スタッフが最初にかける挨拶にも降りていきます。施工者コンペの与件書をどう書くかで、「残したい岩肌」が本当に残せるかどうかが決まります。
bonvoyageが担ったのは、これらを横断して同時に持ち続け、条件が動くたびに相互の関係を調整し直すことでした。一つが変われば、影響は必ずどこか別の領域に出ます。その連鎖を最後まで引き受ける担い手、つまり全体統括プロデューサーがいなければ、プロジェクトは優れた部分の寄せ集めで終わります。
私たちが目指したのは、部分ごとの完成度ではありません。訪れた人が、この施設を一つのものとして受け取れる状態です。空間と、料理と、作品と、迎える人の言葉が、それぞれ別の出自を持ちながら、同じ一つのことを語っている。「その状態の完成度の高さ」です。
建物が持つ時間を活かす
旧山本園大谷グランドセンターは、大谷石の岩山に抱きつくように建つ特徴的な建物でした。岩肌をそのまま構造に取り込んだつくりは、この土地の産業と自然が一体となって生まれた、大谷にしかない建築でした。
昭和末期の閉業から30年以上、この建物は使われていません。荒廃した空間には長い時間が積み重なったからこそ生まれる静けさと、ついつい「神聖」と呼びたくなるような気配が残っていました。
私たちは、その空気を壊すことなく、「新しくつくり替える」のではなく「時間を受け継ぐ」という考え方を軸に改修を進めました。
どこまで手を入れないかを決めることが、この建物ではそのまま設計でした。
目指したのは、流行に左右されず、大谷という土地そのものを五感で体験できる場所です。
昭和末期の閉業から30年以上、この建物は使われていません。荒廃した空間には長い時間が積み重なったからこそ生まれる静けさと、ついつい「神聖」と呼びたくなるような気配が残っていました。
私たちは、その空気を壊すことなく、「新しくつくり替える」のではなく「時間を受け継ぐ」という考え方を軸に改修を進めました。
どこまで手を入れないかを決めることが、この建物ではそのまま設計でした。
目指したのは、流行に左右されず、大谷という土地そのものを五感で体験できる場所です。
アートと食で、大谷を体験する
施設は、「大谷を感じる」という体験を軸に、アートと食の二つで構成しました。
アートスペースでは、The Chain Museumの協力のもと、現代美術家・YOSHIROTTENによるインスタレーションを展開しています。。かつて浴場だった空間を活かし、作家自身が大谷を歩いて採集した素材から制作された作品を展示。地域の人にも初めて訪れる人にも、新たな視点からこの土地と向き合う体験を届けています。
フードスペースは、「ローカルガストロノミー」をテーマに、LIFEオーナーシェフ・相場正一郎氏と、MAISON GIVRÉEオーナーシェフ・江森宏之氏を監修に迎えました。栃木の風土と食材、大谷の歴史や文化を料理として再編集し、この場所でしか成立しない食体験をつくっています。
私たちの役割は、作家やシェフに与件を渡して待つことではありませんでした。土地と向き合うための時間そのものを、スケジュールと予算のなかに設計として組み込むこと。視覚、聴覚、味覚、嗅覚を通して大谷を感じる体験は、その積み重ねから生まれています。
アートスペースでは、The Chain Museumの協力のもと、現代美術家・YOSHIROTTENによるインスタレーションを展開しています。。かつて浴場だった空間を活かし、作家自身が大谷を歩いて採集した素材から制作された作品を展示。地域の人にも初めて訪れる人にも、新たな視点からこの土地と向き合う体験を届けています。
フードスペースは、「ローカルガストロノミー」をテーマに、LIFEオーナーシェフ・相場正一郎氏と、MAISON GIVRÉEオーナーシェフ・江森宏之氏を監修に迎えました。栃木の風土と食材、大谷の歴史や文化を料理として再編集し、この場所でしか成立しない食体験をつくっています。
私たちの役割は、作家やシェフに与件を渡して待つことではありませんでした。土地と向き合うための時間そのものを、スケジュールと予算のなかに設計として組み込むこと。視覚、聴覚、味覚、嗅覚を通して大谷を感じる体験は、その積み重ねから生まれています。
地域の時間を未来へつなぐ
このプロジェクトの目的は、廃墟となった建物を再生することだけではありません。大谷という土地が持つ歴史や文化、風景を、現代の営みとして未来へつないでいくこと。
その考え方を形にした最初に形にしたのが、この施設です。
旧山本園グランドセンターは、「大谷グランド・センター」として人と土地が新たな関係を築く場所として再び動き始めました。ここで積み重ねられる時間が、これからの大谷の歴史になっていきます。
bonvoyageがこの案件で担ったのは、構想を描くことと、それを開業まで運びきることの両方です。法規と事業性という現実の条件を先に固め、そのうえで土地の固有性を損なわない座組みを組む。この進め方は、規模や用途が変わっても、再現できる組み合わせだと考えています。
その考え方を形にした最初に形にしたのが、この施設です。
旧山本園グランドセンターは、「大谷グランド・センター」として人と土地が新たな関係を築く場所として再び動き始めました。ここで積み重ねられる時間が、これからの大谷の歴史になっていきます。
bonvoyageがこの案件で担ったのは、構想を描くことと、それを開業まで運びきることの両方です。法規と事業性という現実の条件を先に固め、そのうえで土地の固有性を損なわない座組みを組む。この進め方は、規模や用途が変わっても、再現できる組み合わせだと考えています。
| 担当 | : | 佐藤舞子, 和泉直人 |
| アートプロデュース | : | The Chain Museum |
| 飲食プロデュース | : | LIFEオーナーシェフ 相場正一郎・MAISON GIVRÉEオーナーシェフ 江森 宏之 |
| 建築設計 | : | 株式会社針谷將史建築設計事務所 |
| FFE | : | 株式会社コンテデザイン |
| 外構・植栽 | : | 株式会社ランドスキップ |
| ロゴ・サイン | : | 清水彩香 |
| 施工 | : | ニチビル株式会社・DDD株式会社 |
| 特別協力 | : | やどプランニング株式会社 / 株式会社大久保 |











